「AI にアップロード」で実際に起きていること
Excel ファイルをクラウド AI にアップロードすると、たいていはその中身が提供元のサーバーで処理されます。オプトアウトしない限り、学習データに使われることもあります。ローカルで処理するのはごく一部のツールだけで、ファイルが Windows PC から外に出ることはありません。この記事では、それぞれの方式が何をどこまで晒すのか、そしてどう確かめればいいのかを説明します。
アップロードは一度きりの行為ではなく、連鎖です。ファイルはネットワークを経由して転送され、提供元のインフラに置かれ、処理されます。設定によっては、再利用できるほど長く残ることもあります。この連鎖のどの環も、情報が漏れうる別々の場所です。だからこそ、プライバシーの問いはひと言では答えられません。
この 2 つの方式は、Excel AI の仕組み を描いた図のちょうど両半分です。クラウドツールはファイルをサーバーまで届けなければなりませんが、ローカルツールにはそもそも送る必要がありません。
クラウドツールが見ているもの、保存しているもの
| 提供元 | 学習への利用(既定) | 保持期間 | リージョン | ポリシーの出典 |
|---|---|---|---|---|
| OpenAI(ChatGPT) | 個人チャットは既定で有効、API は無効 | 削除から ~30 日 | 米国;法人プランなら EU も選べる | openai.com の各種ポリシー |
| Anthropic(Claude) | 個人プランはオプトアウトしない限り有効、法人/API は無効 | 削除から ~30 日;学習を許可した場合は最長 ~5 年(匿名化済み) | 米国 | anthropic.com の法務ページ |
| Microsoft(Copilot、M365) | 商用契約では無効;個人チャットは確認されることがある | コンシューマー版 Copilot は ~18 か月;法人版は管理者が設定できる(例:30 日) | 法人版はリージョンを選べる | microsoft.com のプライバシー |
| Google(Gemini、Workspace) | Workspace の法人データは既定で無効(有効化した場合を除く) | 設定可能 | 法人版はリージョンを選べる | policies.google.com |
ここにまとめた既定値と保持期間は、あくまで執筆時点で各ポリシーが示している内容です。プラン、リージョン、削除のしかた、学習への同意によって変わります。照らし合わせるべきなのは、下の出典です。同じ 4 つのツールは、主要な Excel AI ツールを比べた記事の データアップロードの比較 にも出てきます。
学習の既定を最初に確認すべきなのは、あなたの数式がプロンプトに答えるために一度読まれるだけなのか、それとも後から数式を再現するモデルに組み込まれてしまうのか、その違いだからです。既定でオフのツールでも、リクエストを処理するためにファイルは保存されます。つまりこの違いは決して些細なものではなく、あなたのデータが何になりうるかを左右します。
OpenAI のプライバシーポリシー:ChatGPT が学習をオプトアウトする仕組みと、データの保持条件。
Anthropic のプライバシーポリシー:Claude の学習の既定値と、個人プラン・法人プランそれぞれのオプトアウト方法。
Microsoft のプライバシーステートメント:Copilot および Microsoft 365 に適用される条件を確認できます。
Google のプライバシーポリシー:Gemini と Workspace でデータがどう扱われるか。
ローカル実行では、何が PC の外に出ないのか
ローカル実行とは、ワークブックが手元の端末で処理されるということです。ワークブックをアップロードする必要も、サブスクリプションも、学習プールもありません。ワークブックが PC の外に出ないので、露出は源から断たれます。サーバー側には、漏れたり再利用されたりするものがそもそも存在しません。
ローカルといっても、ツールが何も動かないわけではありません。ローカルエンジンはセルを読み、リクエストを解釈し、結果を書き戻します。ただ、ワークブック自体は同じ 1 台のマシンから動きません。ネットワーク通信が起きるのは、モデルとの会話とソフトウェアの更新確認のときだけ。どちらの通信も、ワークブックを運ぶことはありません。
Mica のセキュリティとプライバシーのページ には、ローカルファーストの方式が実際に何を処理するのか、自分でどう確かめるのかが書かれています。計画を確認してから実行に移せ、応答はローカルで即座に返るので、この主張は日々の使い方の中で確かめられます。
ツールのデータポリシーは、どう確かめるのか
- まずは学習の既定を押さえます。あなたのプランでは、データをモデル学習に使うことが既定で許可されていますか。オフに切り替えられますか。
- 次に、どれだけ保持されるかを見ます。アップロードしたものはどれくらいの間保存されますか。チャットやファイルを削除すると、その後どうなりますか。
- データの置き場所(リージョン)を尋ねます。あなたのデータはどのサーバーに置かれますか。プラン側でリージョンを選べますか。
- 「実行」と「提案」を切り分けます。そのツールはあなたのファイルの中で動くのか(より深いアクセス)、それとも貼り付けるためのテキストを作るだけなのか。実行するとして、それはクラウドで行われるのか、手元の PC で行われるのか。
- 最後は自分の手で試します。タスクを実行して、ワークブックが手元の PC で変わったことを確かめる。あるいは、何かが実行に移される前に計画のステップを見ておく。ポリシーと実際の動作は一致しているはずです。
機密データを扱う場合、クラウドアクセスが限られる地域の場合
顧客データ、財務データ、規制対象のデータがワークブックに入っているなら、クラウドへのアップロードにはどのチェックボックスでも消しきれないリスクがあります。情報漏洩が起きても、ポリシーが変わっても、あなたには止められません。クラウドアクセスが制限されていたり不安定だったりする地域のユーザーには、同じ問題がもっと切実な形で現れます。クラウド AI サービス側から、アカウントや安定した接続、あるいはコンプライアンスをややこしくするサーバーリージョンを求められることがあるからです。
規制のかかる業務では、実際の判断はシンプルです。そのファイルが建物や地域の外に出せないものなら、決して送信しないツールだけが、契約ではなく構造としてその制約を満たす唯一の選択肢になります。ローカルファーストというカテゴリは、機能の好みとしてではなく、動かせないデータに答えるためにあるのです。
グローバルな提供状況と地域ごとの利用 で、アカウント、接続性、リージョンの状況を詳しく説明しています。
よくある質問
財務データを ChatGPT や Copilot にアップロードするのは安全ですか?
ご利用のプランと、そのときに有効なポリシー次第です。法人プランなら、データは通常、学習から除外され、リージョンも選べます。一方、個人チャットは既定の扱いが異なります。上の「ポリシーを確認する」手順がそのまま当てはまります。
Mica のようなローカルツールは、何かアップロードするのですか?
いいえ。Mica はワークブックを手元の端末で処理します。ワークブックのファイルは一切送信されませんし、サブスクリプションも学習プールもありません。
クラウドの Excel AI はオフラインで使えますか?
いいえ。クラウドツールはファイルをサーバーまで届ける必要があり、そのためには接続が要ります。Mica のようなローカルツールなら、ワークブックは手元の PC に置いたままで、接続が必要になるのはモデルとの会話のときだけです。ファイルそのものは送信されません。これこそ、ローカル方式がそのために備えている性質です。
