2 つのカテゴリを整理する
AI ネイティブスプレッドシートは、Excel の形式を新しい AI 前提の形式に置き換えます。代表は Sourcetable、Bricks、そして 2026 年 5 月まで存在した Rows です。一方 Excel AI は、すでに使っている Excel に AI を載せます。答えるだけでなく、ますますワークブック内で実行までこなすクラウドアドイン、ファイルを操作するワークブックエージェント、数式を書くジェネレーター。両者はデモでは似て見えて、実践ではまるで違います。
違いは、仕事がどこに暮らしているかにあります。AI ネイティブスプレッドシートは、独自のファイル形式、独自のクラウド、独自の流儀を備えた新しいアプリです。Excel AI は、すでに使っているファイルとツールの中にあなたを留めます。Excel の中で日々を過ごすチームにとって、これは後付けと移行の違いです。
どちらも同じ課題への答えです —— AI はテキストで止まるべきではない。ネイティブ系は AI を中心にスプレッドシートを作り直すことで応え、Excel AI 系はすでにあるスプレッドシートに実行を足すことで応えます。このアーキテクチャの分岐が、片方が形式を脅かし、もう片方が形式に手を触れない理由です。
どちらも Excel AI の 5 タイプ という枠組みの中にあります —— ネイティブ系は独立した 1 タイプで、それ以外はすべて Excel そのものの上に積み重なります。
「AI 前提」が実際に何を意味するのかを知るには、両方のデモを並べて見てください。ネイティブツールなら、分析したい内容を自然言語で伝えると、要求に合わせてグリッドがひとりでに組み上がります。Excel AI の層は、すでにあるファイルから始めて、その上に機能を足していきます。どちらも半日は魔法のように感じられます —— 違いが見えてくるのは 1 年後です。一方はあなたの条件で動き続け、もう一方はベンダーのロードマップどおりに動きます。
Rows のサービス終了:ケーススタディ
Rows は 2026-05-31 にサービスを終了しました —— クラウドネイティブのスプレッドシートは、会社が畳んだとき、あなたのデータを一緒に連れて行ってはくれません。発表では、チームは Superhuman に加わり、製品は終了するとされていました。戦略上の理由が何であれ、ユーザーへの影響は同じです。エクスポートできるうちにエクスポートし、それから移行しましょう。
これが データのロックイン vs ローカル という教訓を最も鋭い形で示したものです。Excel のデータは、あなたが所有するファイルです。AI ネイティブスプレッドシートのデータは、他人の製品に住むテナントであり、退去の条件は向こうが用意するもの次第です。
Rows のサービス終了のお知らせ:公式のお知らせで、ユーザーに提示された移行とエクスポートの条件も含まれます。
この時間軸が警告をいっそう鋭くします。Rows は本物の資金を集め、本物の製品を作り、それでもローンチから数年で終了しました。教訓は、チームが失敗したことではありません —— 若い SaaS 形式は、資金から経営の注力先まで、ベンダーのリスクをすべて引き継ぐということです。Excel ファイルはそのどれも背負いません。
その後始末は、もう一度読み返す価値があります。ユーザーにはエクスポートと移行が提供されましたが、エクスポートの出来は Rows 自身のツール次第でした。独自形式がきれいに変換されることはほとんどなく、製品内で組んだ数式や自動化が移行を耐え抜くとも限りません。これがフォーマットのロックインの具体的な意味です —— 失うのはデータそのものではなく、その上に築いたものすべてです。
AI ネイティブスプレッドシートを比較する
| ツール | 価格 | ステータス | データ |
|---|---|---|---|
| Rows | サービス終了(2026-05-31) | 終了 | クラウド |
| Sourcetable | 無料、Pro $20、Max $200 | 稼働中 | クラウド |
| Bricks | 無料枠 | 稼働中、ダッシュボードへ方針転換 | クラウド |
| Numerous | $10/月 | 稼働中 | クラウド |
| Grok for Excel | 無料プラグイン + SuperGrok $30 | 2026-07-20 新登場 | クラウド |
クラウド形式の行は、Rows がたった今見せたのと同じ形のリスクを抱えています —— 価格ページもロードマップも、スタートアップの所有物だということです。無料の Excel AI ツールのリストは、両カテゴリの安い側をカバーしています。Grok の Excel プラグインは最新の参入者で、2026 年 7 月に発表され、背後には Grok Excel アドインと SuperGrok のサブスクリプションがあります。
この表が示せないものに目を向けてください。移行コストです。Rows を離れるということは、エクスポートしてワークフローを組み直すということでした。「Excel を離れる」という出来事は起こりません。クラウドツールのステータス列は約束であり、Rows の行はその約束がどれだけの価値だったかの記録です。
開発者側の優位:Excel 向け MCP サーバー
MCP(Model Context Protocol)は、LLM エージェントがローカルファイルを直接読み書きできるようにする標準規格で、Excel はそれが届くようになった形式のひとつです。MCP サーバーがあれば、Claude やその他のエージェントは xlsx ファイルを開き、セルを調べ、コードをあちこちに貼り付けることなく変更を実行できます。ワークブックエージェントのやっていることの開発者版です。
こうしたページでは API のサリエンスがほとんどのブランドより高くなっています —— これはこの経路がまだ初期段階で、重みが偏っているというサインであり、すでに主流だという意味ではありません。Excel のリファレンスサーバーは ExcelMcp(mcp-server-excel)で、ワークブック操作を MCP 対応のあらゆるエージェントに開放します。
MCP プロトコル:プロトコル仕様と、各種データ・ファイル形式に対応するサーバーのレジストリ。
MCP 公式 GitHub:プロトコルの管理者が維持するリファレンス実装と SDK。
ExcelMcp(mcp-server-excel):エージェントに xlsx ファイルの読み書き権限を与える Excel サーバー。
MCP という経路は、面白い動きは Excel 側にあることを思い出させます。エージェントがローカルファイルに手を伸ばすのはこれから向かう方向であり、「ファイルを自分で所有する」モデルを弱めるどころか強くします。MCP サーバーを Excel につなぐ開発者は、形式を捨てずに実行を手に入れられます —— 両方のいいとこ取りです。
具体的な MCP ワークフローを見れば、その形がわかります。エージェントがローカルのワークブックを開き、必要な範囲を読み、値を計算または書き換えて、保存する。ファイルパスも変更内容も、後から監査できます。アップロードなし、貼り付けなし、形式の移行なし。 これがファイル所有モデル上での実行であり、開発者の経路が Excel から離れるのではなくExcel を指している理由です。
ローカルに留まる Excel AI
- ExcelGPT:オープンに配布され、ローカルで動く Excel AI。無料、アカウント不要、クラウド依存なしで、Mica と同じローカル群に属します。
- OfficeCLI:Excel 向けのオープンソースなコマンドラインドライバーで、ワークブックをローカルで自動化します。開発者優先で、定義上無料です。
- Mica とは:ローカルのデスクトップ型ワークブックエージェント。無料でダウンロードでき、あなたのファイル内でタスクを実行し、データは PC に留めます。
ローカル群は、ネイティブ系とは逆の賭けです。データを若い形式に賭けるのではなく、Excel ファイルを手元に残し、AI を自分の PC に置きます。形式の移行なし、サブスクリプションなし、そしてあなたの仕事を巻き添えにするサービス終了リスクもなし。
生き残るカテゴリの選び方
- データ主権:ファイルを自分の PC から出せないなら、ローカル群しか選択肢はありません。
- 形式の寿命:Excel の形式はスタートアップより長生きします。AI ネイティブスプレッドシートは、ベンダーの寿命を引き継ぎます。
- 利便性:ゼロから始めたい、しかも AI 前提がいいなら、ネイティブツールが最速で動き出せます。
- ハイブリッド:日常業務は Excel AI に任せ、新しい形式は実験として扱い、住処にはしません。
生き残るカテゴリとは、その失敗を自分で吸収できるカテゴリです。 Excel AI は、すでに持っていた Excel ファイルへと退化します。AI ネイティブスプレッドシートは、最悪の場合、ベンダーとともに消える —— その違いを、Rows はたった 1 通の告知で具体的なものにしました。
この 2 つのカテゴリは対称な賭けではありません。ネイティブスプレッドシートは「新しい形式が勝つ」ことに賭け、Excel AI は「Excel の普及台数は何にでも耐える」ことに賭けています。Rows は、後者の賭けのほうが安全だと示すデータ点です —— そしてローカル群は、その賭けの中で最もリスクの低いバージョンです。
ほとんどの組織にとって、現実的な答えはどちらか一方ではありません。Excel をシステム・オブ・レコードとして据え、日常業務用に Excel AI の層を重ね、AI ネイティブ形式は予告なく捨てられる実験として扱う。このハイブリッドなら、新カテゴリの利便性を保ちながら、データをその寿命に賭けずに済みます —— まさに Rows のユーザー自身が、そうしておけばよかったと悔やんだ論理です。
よくある質問
Rows に何があったのですか?
Rows は 2026-05-31 にサービスを終了しました。チームは Superhuman に加わり、製品は終了し、ユーザーにはエクスポートと移行が提供されました。
AI ネイティブスプレッドシートと Excel AI は何が違うのですか?
ネイティブツールは Excel の形式を自社クラウドの形式に置き換えます。Excel AI は、すでにある Excel ファイルに AI を重ねます。
AI ネイティブスプレッドシートは、重要なデータにとって安全ですか?
Rows が今しがた見せたリスクを抱えています —— 会社が畳めば、製品も一緒に消えます。ローカルツールなら、データはあなたが所有する Excel ファイルに留まります。
